生物の生存方法には、色々ありますが、「動かない事を良しとする」という一派も一大勢力で、代表格はナマケモノ、コアラ、サンショウウオなんかがいます。
50才も半ばを過ぎた頃、「自分は、生きがいや働きがいを求めて一生を送るのは向いてないんじゃないか?」「働きがいやら、そういうのは、マグロやハチドリの様に生きることが動くことみたいな人種に任せて、自分はひっそりと動かない事を良しとする生き方に向かおう」と、思い立ちました。つまり、働くのはやめて、「お金を使わないで生きていこう」と言うことです。
この素晴らしい思いつきは、頭を離れることなく、だんだん現実味を帯びた計画となり、結果、53才で会社を辞めることで、実現することになりました。そうして私は、とある田舎に引っ込み、隠居生活を送ることにしたのです。
さて、そうして始めた、隠居生活、時間はあります。なので働いているときには、時間や距離の制約があって出来なかった、グライダーを再開することにしました。
人生100年時代なんて浮かれていても、50才を過ぎると確実に体は悪くなり、出来ていたことが出来なくなってきます。そう、グライダーを再開するにしても簡単にはいきません。航空身体検査という壁が立ちはだかっていました。現役で働いていたとき、毎日飲み歩いていた私の体は、見えないところが壊れかけています。医者が言うには血管がカチコチで尿からは少量ながら糖が・・。
運輸大臣の許可がないと身体検査が通らない体になっていました。昔、航空身体検査を受けていた病院に電話すると、もうやっていない。というではありませんか。航空身体検査をやっている病院は探してみると、県内に1軒しかなく、個人のお医者さんが半ばボランティアで航空身体検査医をやっていらっしゃいました。そのお医者さんもパイロットでした。その病院に2時間かけて伺いました、なにせ田舎住まいです。そこでの検査は自身の過去の不摂生による数値の不良で、一回では通らず、別の病院の、内科と目医者で検査を受ける必要がでました。
耐糖検査というブドウ糖を飲む検査を、お願いしに、家の近くの総合病院に行って、航空身体検査の予備検査でと窓口で伝えると、当病院では健康診断は、保険適用で決められたコースしか出来ません。と回答され、航空身体検査なるものから、延々小一時間、説明をさせられたり。眼科の方も、田舎眼科は緑内障と白内障の手術しかしてない、こんな視野を図る機械は大学病院しかないよ。と返答され、都市部の眼科に視野を測る機械をお持ちですか?と、あちこち電話をしたり。まあ、壁の高いこと高いこと。紆余曲折あって、やっと通った航空身体検査も期間が半年に制限されていました。(今は一年になっています)。
